業界歴30年のテレビ番組ディレクターが教える動画制作の撮影方法 撮影時のポイント

5秒前カウント

撮影時に気をつけるべきポイントはたくさんあります。我々は、普段仕事として行なっているので、そこまで気がつかないのですが、ここでは、普段撮影をしない人からするとなるほど、と思う点について、説明していきたいと思います。まず、通常の撮影だと録画ボタンを押したらすぐに撮影スタートと思いがちなんですが、そうすると編集の時ののりしろがなくなってしまいます。特にインタビューの収録の時や、カメラワークの動きをつけたい時は、5秒前カウントをすることをお勧めします。5秒前カウントとは、録画ボタンをおして、5秒前からカウントしていくことです。撮影現場で声に出して、「5秒前、4、3、2、1、スタート」と大きな声で、現場にいるスタッフ全員に聞こえるように言うのです。インタビューなどの音声を収録する時には、3秒前までは声に出してもいいですが、2、1、スタートは声を出さすに合図だけ送るようにしてください。これをやっておくと、編集の時に作業しやすいと思います。それからもう一つ、撮影現場が引き締まります。緊張感が出てきて、やる気スイッチが入ります。ぜひ試してみてください。

録画はすぐ止めない

次に撮影シーンが終わった後ですが、録画ボタンをすぐ止めるのではなく、これも5秒ぐらい余韻を残して止めたほうがいいです。理由は、これも編集の時の繋ぎや映像の余韻を作りたい時に、数秒あると、みやすい編集ができます。また、カメラワークの動きをつける時も同様で、少し、静止部分があると編集した時に見やすくなります。昔は、テープで収録していたため、テープの残りを気にしながら撮影ということもありましたが、今は、データで収録ですので、当時に比べて相当長時間の撮影ができるようになりました。ずっと録画しっぱなしだと編集の時に大変ではありますが、インタビューや密着取材のような場合は、なるべく録画しっぱなしにしておくと、逆に素の部分を収録できる機会があるかもしれません。試してみてください。

プレビューで撮影データをチェック

撮影が全て終わり、撮り漏れがないかスケジュールや台本を確認することはもちろんですが、撮影したデータがきちんと撮れているか、確認することも大切です。例えば、インタビューの撮影をしたのに、音声がうまく収録されていなかったり、録画ボタンを押したつもりが押していなくて、うまく撮影できていなかったりすることがあります。一応撮影が全て終わった後には、収録したデータをきちんと確認して、ミスがないかをチェックしておいたほうが良いです。解散してしまうと、追加でまた撮影の準備をし、いろいろな人にお願いをしなければなりません。よくあるミスとしては、ビデオカメラの撮影だと、カメラ本体には収録されていたけど、ディスクには入っていなかったとか、音声がカメラのマイクでは収録できていたけど、ピンマイクの音声が収録されていなかったとか、誤操作で、データを消してしまったとか、現場ではいろいろなことが起こります。注意してください。

スケジュールとの兼ね合い

最後に撮影スケジュールに関してもいくつか説明しておきたいと思います。大掛かりな撮影では、細かくスケジュールを調整して、スケジュール通りに進行しないと、いろいろな人に迷惑がかかったり、取材先に迷惑がかかったりします。取材先に行く時には、移動時間も含めて、しっかりとしたスケジュールを組んで欲しいです。特に相手先がある場合には、現場に到着する時間、準備する時間、実際に撮影する時間、片付けの時間、これを全て計算して、スケジュールを考えなければなりません。我々の場合は、アシスタントディレクター、いわゆるADさんがスケジュールを調整して、作成する場合が多いですが、個人の撮影では、全て自身でやらなければなりません。なんとなくこのぐらいでは、意外にうまくいかないものです。実際にどのぐらいの時間があれば、自分の納得いく撮影ができるのか、よく計算して、スケジュールを考えるとともに、一度決めたスケジュールはなるべく守るように努力してください。

執筆者プロフィール

小笠原剛。日本テレビ系の番組制作会社に勤務。日本テレビの数々の番組を担当したのち、渡米。アメリカで3年間、MLB、NBA、NFLなどのディレクター業務を行った後、帰国。帰国後は、フリーランスとして、民放各局でテレビ番組を制作。2019年には、ストリートアカデミーというサイトを通じて「動画制作・動画編集・YouTube関連を教える仕事」を始める。2023年3月に株式会社いのししを設立。現在に至る。2024年8月に書籍「動画プロモーション入門」を出版。ご質問などは、公式LINEより、お気軽にメッセージをお送りください。

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