業界歴30年のテレビ番組ディレクターが教える動画制作のシナリオの作り方 シナリオ作成の流れ

大まかな流れを考える

具体的なシナリオの作り方を説明していきます。まずは大まかな流れを考えます。流れというのは、ストーリーです。どういうシーンを入れていこうか。どう順番にシーンを入れようか。ナレーションやテロップはどういう風に表現しようかなどです。大切なのは、実際の撮影で予定が変わったとしても、シナリオを作成することで、大まかな枠組みを作っておくことです。この作業をやっておかないと、いざ編集の時に作業が進みません。よく「編集でなんとかなりますよね」という質問を受けますが、編集ではどうにもなりません。このシナリオ作成の時に、色々なことを想定しておかなければならないのです。撮影で予期せぬことが起こったとしても、きちんと編集でまとめられるように、色々と考えてみて下さい。

撮影項目を整理する

大まかな流れを考えたら、次は、撮影項目を整理します。撮影項目とは、撮影したいシーンです。定点カメラでその事柄をずっと撮影する(例えば、掃除とか)のであれば、それほど難しくありませんが、カメラの位置をどうするかは考えた方が良いです。そうでない場合は、どういうシーンを撮影したいか、同じ場所でいくつかのことを撮影するのであれば、何を撮影する必要があるのかを整理します。移動を伴う撮影の場合、移動時間もありますから、限られたスケジュールの中で、どのシーンを撮影するかの優先順位をつけていかないと、撮影が予定通りに終わりません。自分だけで撮影するのであれば、まだしも、他のスタッフがいる場合、取材先の協力を得ている場合は、撮影の進行も重要なことです。シナリオを作る段階で、撮影の優先順位を考えておく意味においても、撮影項目を整理するのは大切なことです。ぜひやってほしいです。

一つのストーリーにする

動画の大まかな流れと、撮影項目が整理できたら、それをシナリオ上で整理し、一つのストーリーにまとめ上げていきます。見ている人にわかりやすいストーリーになっているか、多くの人に興味を持ってもらえるストーリーになっているかを意識しながら、全体の流れを考えていきます。ただし、ここで完璧にストーリーを固めるのも良くありません。撮影をしていく中で、思っても見なかったシーンが撮影できたり、撮影している中で、浮かんでくるアイデアというのもたくさんあります。それを念頭においた上で、ストーリー作りを行なっていきます。撮影シーンの項目を箇条書きにしていき、そのシーンにどういうメッセージを伝えていくのか(ナレーションで伝えるのか、テロップで伝えるのか)、インタビュー動画であれば、どういう質問をするのか、その質問の意図は何なのかをよく考えていくことです。

細かい内容を精査する

最後に細かい内容を整理していきます。仮で良いので、ナレーションの原稿を作成していったり、テロップの文言を考えていったり、インタビュー動画であれば、具体的な質問内容を決めていったりする作業です。重ねて説明しますが、撮影前にシナリオを作成するのは、2つの意味があります。一つ目は、自分の中で、動画で表現したい内容を整理すること、もう一つは、その内容が、他の人(視聴者)に伝わるのかを確認することです。シナリオを作成することは、自分で表現したい内容を整理することですが、それは、編集作業にも関わってくることです。ここで手を抜いてしまうと、編集作業がうまくいきません。これを覚えておいてください。もう一つの意味、他の人に伝わるかですが、これはぜひ、シナリオの時点で、色々な人に見てもらって感想を聞くと良いです。もちろん全てを受け入れて修正する必要はありませんが、シナリオを見てもらうことで、視聴者が感じることを動画を制作する前に知ることができます。この意見は非常に大切ですので、肝に銘じて、その先の撮影に進めればと思います。

執筆者プロフィール

小笠原剛。日本テレビ系の番組制作会社に勤務。日本テレビの数々の番組を担当したのち、渡米。アメリカで3年間、MLB、NBA、NFLなどのディレクター業務を行った後、帰国。帰国後は、フリーランスとして、民放各局でテレビ番組を制作。2019年には、ストリートアカデミーというサイトを通じて「動画制作・動画編集・YouTube関連を教える仕事」を始める。2023年3月に株式会社いのししを設立。現在に至る。2024年8月に書籍「動画プロモーション入門」を出版。ご質問などは、公式LINEより、お気軽にメッセージをお送りください。

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