トルコ中央部にカンガルドックという種の犬がいる。
カラヴァシュの愛称で呼ばれるこの犬は、現地の意味で「黒頭」を意味する。
1000年も前からアナトリア高原に生き続けると言われるカンガルは、今もオオカミから家畜を守る。
戦えなくなった老犬は、街を徘徊してゆっくりと歩いている。
彼らの意思は、明確で勇敢だ。
現代の意味合いの中では、「犬」というより、もっと原始的な形容になるだろう。
荒野の野生。
黒い頭の獣。
その姿は、遠くの山々と淡く重なって、やがて陽とともに眠りにつく。
雪には、足跡だけが残っている。